以下、UCLA の小川隆広 教授からのレポートです。
以前、だいぶ歯科医師の実情について議論したときに、米国では医師と歯科医師の平均年収がほぼ同じであることを書きましたが、さらに米国における医師あるいは医学部と我々歯科界の関係についてご紹介します。
UCLAの場合、歯学部でのテニュア(終身教授)トラックの助教授以上の教官にしめるDDSでない人の割合(つまりPhD)は、30%をはるかに超えています。つまり、歯学部は自然科学者のエキスパートを多く受け入れます。
歯科サイエンスの向上のためにはDDSにこだわりはないとわりきっています。もちろんテニュアでない臨床教授は全員DDSです。
また、医学部と歯学部の交流はさかんで、骨グループは、どちらかというと歯学部が中心となってセミナーなどを開催し、医学部の整形や骨学者をひっぱっている。
私も一員。そして、例えば、整形外科がもっている研究グラントに歯科医師が共同研究者として半分ぐらい名をつらねる。
私もその一員。つまり、歯科からの人材がなければ整形外科研究もなりたたないぐらい。
私の所属するUCLAのワイントロープセンターの組織学ラボやマイクロCT施設などに医学部から常に人が研修にきている。
また、頭頸部外科、頭頸部耳鼻科癌カンファレンスは、我々の講座の顎顔面補綴医との連携なしには成り立たず、治療計画立案、術前診査、固定ステント、サージカルオブチュレーター作成、ラジエ―ションステント、ラジエ―ション前フッ素ステントにいたるまで、歯科医師、歯学部は密に関与・連携し、チームアプローチが確立している。
歯学部には、歯科以外の医科や製薬の企業からの連携や依頼の話が多くあり、共同研究開発も盛ん。 私のチームも歯科以外の企業と多く連携している。
さらに、多くのアメリカの大学ではバイオメディカルエンジアリングといって、医学部、工学部、歯学部のティッシュエンジニアリング専門家があつまってできている学部があり、歯学関係者はキーポジションを占める、などなど。
日本は、ご存じのように医学部から何とか逃れようとしてきて、結局は多くの(すべての?)国立歯学部が吸収されてしまったと聞いています。
吸収されたころ、若い研究者が、ついに歯学部なくなっちゃいましたと嘆いていました。
なぜこのようにあまりにもちがうことになるのでしょうか?
このように普通に可能な歯学部の存在価値とプレゼンスを目指しましょう、と私は思うのです。
ほんとうはこんなはずではないのです。
スマイルデザインマスター 原田幹夫の母校である国立東京医科歯科大学には、医学部と歯学部が同じ敷地内にあるのだが、必ずしも連携がうまくいってないらしい。
勿体無い話だ。